日本遺産:人吉球磨地域

文化庁が2015(平成27)年度に創設した『日本遺産』の認定制度。これは地域の歴史的魅力や特色を形作る特色を、日本の文化・伝統を語るストーリーとして認定するもので、その第1号として熊本県の人吉球磨地域が全国の17の地域とともに選ばれました。

国宝 青井阿蘇神社(人吉市)

国宝 青井阿蘇神社(人吉市)/相良氏入国より約400年前、806(大同元)年創建。現在の社殿は江戸時代初期に造営されたもの。2008(平成20)年に、楼門をはじめとする社殿5棟が国宝に指定されました。

"相良700年が生んだ保守と進取の文化~日本でもっとも豊かな隠れ里・人吉球磨~"

そのストーリーをひもといてみると・・・・・
【相良文化の成り立ちと特徴】
今から800年もの昔、源頼朝の命を受けて、遠江(とおとうみ)国相良荘(さがらのしょう・現在の静岡県)から相良のお殿様がこの人吉球磨の地に来られました。その後、明治維新を迎えるまで、なんと700年もの長きにわたり、この地を治められたのです。しかし、この偉業を達成するには大変な苦労がありました。「険しい山々に囲まれた土地であれば、外敵の侵入は防ぐことができる。しかしその地形と球磨川の恵みによって古(いにしえ)から育まれた独自性の強い土地柄、個性の強い民衆の中に入っていくにはどうしたものか・・・。」
悩んだお殿様の最初の秘策は・・・「まずは、これまでの伝統文化を認めることから始めよう!」自我の強い民衆の心をつかむため、入国以前の領主に関わる神社仏閣や仏様を残すことにしたのです。
民衆の心は少しずつ開き始めます。そこで次の秘策です。「民衆の娯楽を認めてあげよう」貴重品である米を原料とする米焼酎の醸造を認め、民衆の暮らしも徐々に良くなり、藩の財政も立て直っていきます。民衆の心はグッとお殿様に傾いていきました。相良のお殿様に対する忠誠心と自負心が芽生え、お殿様の庇護のもと領民は伸び伸びと豊かな生活を営み、庚申(こうしん)信仰や三十三観音などの民間信仰も受け継がれるようになりました。
また、最先端の技術・文化を取り込み、領内にどこか都ぶりな茅葺かやぶきの社寺を造り、自ら祭や儀式も執り行いました。民衆は自分たちの土地にみごとな建物が建ったのを誇らしく思い、「お殿様、ここの管理は我々に任せてください!」こうして社寺の維持管理も地域に根付いたものとなったのです。
相良文化の特徴は、このように領主と民衆が一体となって形成され継承されたところにあります。相良のお殿様による秘策は、この地を治めるための必須条件でもあり、その後も歴代当主が継承し続けました。

願成寺阿弥陀如来座像(人吉市)

館蔵時代のはじめに相良氏の氏寺として建てられました。境内の裏山には相良氏の初代から37代までの歴代藩主の墓が並んでいます。御本尊である阿弥陀如来座像は、国指定重要文化財。

人吉城跡(人吉市)

球磨郡を統一した相良氏が、戦国時代以降江戸時代を通じて代々居城とした城。年に1度、おくんち祭の時には城内を一般に開放し、祭り・芸能を庶民と共に楽しんだといわれています。


青蓮寺阿弥陀堂(多良木町)

鎌倉時代以降の鎌倉時代以降の多良木相良氏代々の菩提寺で、広く民衆の信仰を集めました。郡内に残る中世的な景観の代表的な場所の一つ。

生善院(水上村)

通称「猫寺」。人吉藩化け猫騒動にちなむ観音堂。市房神社参詣時には藩主が立ち寄った。「狛猫」が参拝客を迎えます。

【現代に息づく相良文化】
こうして形成された相良700年の領民の意識は、お殿様がいなくなった現代にも脈々と受け継がれています。球磨神楽やおくんち祭のように、民衆が代々地域で信仰や儀礼を守り続けた結果、今日では各地で姿を消した茅葺の建造物も、この地ではごく当たり前の光景として至るところで目にすることができます。さらに、数百年の歴史を誇る世界ブランドの球磨焼酎は、過去と現在をつなぐ共通の味わいを感じさせ、焼酎組合が「球磨の焼酎学校」を開校し、焼酎文化を次世代に伝える取り組みを行っています。
相良三十三観音めぐりは、春秋のお彼岸に行われる「御開帳(ごかいちょう)」を目当てに札所をめぐる大勢の人たちで賑にぎわい、地域の方々の温かい「お接待せったい」も相まって、身も心も清められ癒されます。このような独自の文化が現在も継続している状況は、まさに人吉球磨でしか見ることができず、昭和を代表する歴史小説家である司馬しば遼太郎りょうたろうは、その著書『街道をゆく』の中で、人吉球磨の地を「日本でもっとも豊かな隠れ里」だと絶賛しています。

球磨焼酎

幽玄な趣を秘めた山々に囲まれた盆地に位置する人吉・球磨地域。盆地特有の寒暖の差が激しい気候と風土に育まれた良質な米をぜいたくに使った「球磨焼酎」は日本に4つしかない産地呼称が認められた本格焼酎ブランドの一つです。

球磨川下り

日本三大急流のひとつに数えられる球磨川は、九州山地の宮崎県堺の水源より八代まで全長約115kmの河川です。人吉盆地を穏やかに流れていた川が、球磨村渡周辺で一気に川幅が狭くなり流れが激しくなるため、古くより、急流で川下りが楽しめる場所として親しまれてきました。かの与謝野鉄幹・晶子夫妻も人吉を訪れた際に川下りを楽しみ、球磨川についての句を詠んだといいます。


肥薩線からの車窓

平成21年に開業100周年を迎えた肥薩線は、八代駅(熊本県八代市)から隼人駅(鹿児島県霧島市)までを結ぶ全長124.2キロメートルローカル線で、産業と自然が見事に融合した全国でも珍しく貴重な路線です。八代―人吉間(川線)では球磨川に沿って走り、日本3大車窓のひとつに数えられる美しい渓谷を眺めることができます。

日本遺産とは?

日本各地の歴史的魅力や特色、文化・伝統を語るストーリーを「日本遺産」として文化庁が認定するものです。ストーリーを語る上で欠かせない魅力溢れる有形や無形の様々な文化財群を、地域が主体となって活用し,国内だけでなく海外へも戦略的に発信していくことにより、地域の活性化を図ることを目的としおり、2015年(平成27年)4月、人吉球磨を含む18地域のストーリーを初認定しました。世界遺産登録や文化財指定は、いずれも登録・指定される文化財(文化遺産)の価値付けを行い、保護することを目的とするものですが、日本遺産は,既存の文化財の価値付けや保全のための新たな規制を図ることを目的としたものではなく、地域に点在する遺産を「面」として活用し、発信することで,地域活性化を図ることを目的としています。

人吉エリアおすすめの味

山江の栗饅頭

球磨盆地の北部山江村は栗の名産地として名高く、そこで収穫される栗は大粒で糖度が高くブランド栗として知られています。

餃子

人吉は、歴史の町、温泉の町、であると同時に「餃子の町」でもあるのです。市内には何軒もの人気店があり、それぞれこだわりの味を提供しています。

鮎すし

人吉駅駅舎内売店で販売されている『鮎すし』。日本三大急流のひとつ『球磨川』の鮎を使用してます。昆布だしで炊いた寿司飯の上に、新鮮な酢〆の鮎をのせた人気の駅弁。新鮮な鮎の風味をそのまま生かし、酢締めにして昆布だしで炊いたすし飯の上にのせて作った、清涼感満点の姿すしです。

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