フロントランナーインタビュー

INTERVIEW
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ニューポート法律事務所 パートナー弁護士

齋藤 貴弘 さん

東京都出身。
2016年に東京にてニューポート法律事務所を設立し、JRJP博多駅ビルにもオフィスを開設。弁護士として様々な法律業務を取り扱うほか、風営法改正や国内のナイトタイムエコノミー活性化に関わるルールメイキングに注力。音楽やカルチャーにも精通し、福岡の音楽コミュニティにもネットワークを持つ。
2019年4月には、初の著書『ルールメイキング: ナイトタイムエコノミーで実践した社会を変える方法論』 (学芸出版社) を出版。

2019年12月11日

「ここでしかできない体験」が、街の魅力になっていく。
天神カルチャーの魅力を引き出すまちづくりと、外に向けた発信を

天神には、カルチャーやファッションの街として人を惹きつける魅力がある

齋藤さんは東京出身とのことですが、もともと福岡との関わりもお持ちだったのでしょうか?

妻が大牟田出身なので、たまに帰省などで大牟田に行くことがあります。また、義父は湯布院に住んでいまして、九州との一番はじめの関わりはそのあたりでした。
そのあと、何かのきっかけでFDC (福岡地域戦略推進協議会) 事務局長の石丸さんとお会いし、福岡のナイトタイムエコノミーや夜間観光などについて意見交換をしたりしてきました。

ナイトタイムエコノミーは、今とても注目されていますね。福岡のまちづくりにも欠かせないテーマです。

2年ほど前には、高島市長が九州大学箱崎キャンパス移転後の跡地活用について議論する大きなシンポジウムを開催されたときに、NEXTOKYOのメンバーとして議論に参加したことがあります。NEXTOKYOというのは東京の未来を考える有志のゆるい集まりなのですが、風営法改正を含むナイトタイムエコノミーはそのテーマの一つです。箱崎のシンポジウムでは、古い名建築を壊さずにどうリブランディングし再活用するか、という話をしていました。

福岡に拠点を置こうと思ったきっかけは、どのようなものでしたか?

元々、宮崎で知財専門の法律事務所で働いていた伊藤弁護士 (ニューポート法律事務所 パートナー弁護士) と知り合い、東京で一緒に事務所を作りました。それから3年ほど経って、私も福岡に色々つながりがありましたし、伊藤さんも九州の仕事が多かったこともあり「頻繁に往復するよりは九州に行ったほうが楽だろう」ということで、福岡に拠点を作りました。

福岡の中でも、博多にオフィスを構えられた理由はあったのでしょうか?

他にも色んな候補はあったようですが、まずは九州全域にすぐ行けるということ。それから天神と比べても空港に近い立地ということで選んだとのことでした。このオフィスの家賃を初めて聞いたときにはびっくりするほど高くて、東京で同じ条件のシェアオフィスを借りるよりも高いんじゃないかと思います。

福岡では、どのエリアに行かれることが多いですか?

福岡に来るのは月1-2回ですが、博多、天神あたりで打ち合わせをすることが多いです。基本的には日帰りです。一泊する際には夜、飲みにいくことが多いですね。旧大名小学校周辺にもよく行くので、街の雰囲気は大体分かります。

博多と天神の違いについて、どう感じられますか?

博多のほうがビジネス、天神のほうがカルチャー、ファッション街というイメージがあります。東京でいうと、博多は東京駅周辺のオフィス街、天神は渋谷エリアといった感じでしょうか。洋服屋さんもありますし、昔はレコード屋さんもたくさんあったと思いますが、カルチャー色があり、IT的なところがあり、そしてビジネスがあり…。今泉の方に行くと、小さい路面店の洋服屋さんなど、おしゃれなお店が沢山あるという印象です。中目黒あたりに似ているかもしれません。

福岡ならではのカルチャー界隈は、もっと外向けに発信を

カルチャーや音楽シーンを引っ張っていくエリアとして、天神にはポテンシャルがあるでしょうか?

福岡はアジアの若い子たちが地政学的に来やすいエリアというイメージがあります。最近は渋谷でもアジア系のおしゃれで若い子たちが買い物をしている姿をよく見かけますが、日本に来ると、夜遊ぶ場所がない。そこで例えばWWW (渋谷のライブハウス) では上海や韓国のクラブとのコラボイベントをしていたりします。こういったことは、地政学的な利点のある福岡ではより容易にできる気がします。カルチャーに引き寄せられてくる若くて感性豊かな人たちを引き付けるポテンシャルがあるんじゃないでしょうか。

福岡を見ていて、ここは物足りないな、と感じることはありますか?

福岡には濃い音楽ルーツがありますよね。音楽が元々好きなので音楽の繋がりも結構あるんですが、レジェンド的な人がちょこちょこ点在しているな、という印象があります。
ただ、その音楽シーンが外向けに見えていない気がします。活動が東京ベースになっていたり、福岡では音楽とは別の仕事をしていたりと、「福岡の音楽シーン」を作れていないように感じます。

音楽やカルチャーのシーンを作るためにはどういったことが必要なのでしょうか?

東京だと、例えば恵比寿のリキッドルームというライブハウスには山根さんという方がいます。その人がキュレーターやインキュベーターのような立ち位置で、常に引っ張っている。その周りに、面白い若い子たちが集まってきていて、インディペンデントな人たちからメジャーな人たちまで様々な取り組みを一緒にしています。サカナクションは「聴きたかったダンスミュージック、リキッドルームに」という楽曲まで作っているほどです。これは一例ですが、表には出てこないけれど重要な人たちの存在があってシーンが作られているということだと思います。

事業者やエリアの役割を統一することで、街の特色づくりを

福岡・天神では再開発が進んでいますが、魅力的な街とはどんなものでしょうか?

都市開発では、どれだけミステリアスな雰囲気を残せるのかが極めて重要であるということも議論されています。曲がり角や少しいびつな場所が必要だったり。ヒューマンスケールとよく言いますが、車で乗り入れるだけではなく歩いて感じられる街というのは、昼とは違う街の魅力を引き出すためにも極めて重要です。そういう意味では、福岡は小さくておもしろいお店もありますよね。

事業者による開発にはミステリアスな魅力が薄れてしまう側面もありそうです。

うまく折り合いをつけていると思うのは、東京の新丸の内ビルディング7階にある丸の内ハウスというレストランフロアです。新しいビルで垢抜けたレストランが6-7店入っているフロアですが、壁で仕切られていないんです。だだっ広いフードコートになっていて、その中心にDJブースがあり、開放的な音楽が流れています。奥の方に行くと隠れ家的なところがあって。
テーブルも横町チックに雑然と並んでいて。自分が主役っぽくなれる演出がされていて、食べているところが通路から見えるようになっています。

素敵ですね。しかし、普通でないことの実現には、障害もありそうです。

やはり「人」が重要ですね。新丸の内ビルディングのデベロッパーである三菱地所とともに玉田さんという女性が丸の内ハウスの運営をしていて、三菱地所の中でもかなり調整に調整を重ねたようです。通路にテーブルを置くことや、テラスの外にドリンクを持ち出せるようにしたことでグラスが落ちたら、などリスクが多い中、デベロッパーが腹をくくり、仕組みから作って取り組んだということだと思います。なかなかブッキングできないキーパーソンを引き寄せられることもしていて、商業的な開発と街のユニークさのバランスをぎりぎりのところまで作れている感じがします。

「会いたい人」がいる、そして「ここにしかない」がある街へ

まちづくりでは、何を大事にすべきだとお考えですか?

モノを買うというのはオンラインで済んでしまう中、実際にお店まで行かないといけない理由や価値をどう作るか、だと思います。福岡で洋服を買いに行くと、東京に比べてすごく話しかけられるな、という印象があります。全然関係ない話をずっとしていることもあって、コミュニケーションの中でなんとなくこういう洋服が良いのかな、というのが出てきたり、出てこなかったり。こういう体験価値が大事なんだと思います。自分がそこに帰属しているとか、そこに行くと誰かがいて、会いに行くというような感覚です。

モノを買いに行くのではなく、人に会いに行くことに価値があるんですね。

最近では、「メタ観光」という言葉もありますが、「この蕎麦屋に行って蕎麦を食べたい」ということよりも、その蕎麦屋の歴史的な文脈や昔誰々がここで何蕎麦を食べたといったメタ情報がいくつかのレイヤーで重ねられていて、そこに価値ができているという話もあります。

「メタ観光」というのは、ドラマのロケ地に集まってくる、みたいなことでしょうか?

そのとおりです。映画『君の名は。』の聖地巡礼などは典型事例ですね。そこで食べるものに意味があるわけではなくて、わざわざ行列に並んで作品に登場したスパゲティを食べるという行為自体に意味がある。リアルスペースにわざわざ行くことでできる体験と、その演出のしかたが重要になっています。

海外でも様々な街を訪れていらっしゃいますが、インバウンド観光の視点から、福岡や天神の可能性についてどう思われますか?

インバウンド観光というのは国際競争です。世界中どこの都市もインバウンド観光客をとりあっているので、何かキラーコンテンツがないと来てくれない状況になっています。「何でもある」ではなく「そこに行かないとこれはない」というものを作る必要があります。その点、福岡の食のクオリティはダントツですごいと思います。

「福岡は食べ物がおいしい」という話はよく聞きます。

おいしいだけでなく、面白い店も色々あって。例えばペヤングを手作りで再現する「つどい」という店は、ホリエモンなど東京のグルメな人たちが行って「なんじゃこりゃ」と有名になっていたり。外から来て飲食店をするのは過酷なくらいレベルが高いですし、福岡の食は「ここに来ないと体験できない」キラーコンテンツになり得ると思います。

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