フロントランナーインタビュー

INTERVIEW
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七條 芙美

HAPPY RELATION 代表
元SUiTO FUKUOKA 女将

七條 芙美 さん

長崎県出身。
HAPPY RELATION 代表。
2015年から2019年3月までSUiTO FUKUOKA 女将を務める。
国内外で日本語教師として働き、海外で日本語学校や日本語教師養成学校の立ち上げに関わったほか、化粧品の営業や懐石料理店など多岐に渡る経験を持つ。その後福岡に拠点を移し、ご当地グルメの開発から情報発信までを手掛ける地域活性コンサルタントとして活動。事業立ち上げからおもてなしまで幅広い知見を活かし、SUiTO FUKUOKAの立ち上げ (2015年) から運営までを手掛けた。
※このインタビューは、七條さんが SUiTO FUKUOKA の女将をされていた2019年1月に実施したものです。

2019年10月11日

天神の弱点は、知名度の低さ。目的を持って訪れたくなるコンテンツ作りと情報発信を

人の繋がりが近く大らかな福岡で、「やりたいことをやる」働き方を

「観光案内所の女将さん」という唯一無二の存在の七條さん。もともと長崎のご出身なんですね。

はい、長崎の島原半島出身です。ずっと海外に興味があり、大学でも英語を専攻していました。海外への興味の根源にあるのは、祖父母がマレーシアでずっと仕事をしていたことや、母がインドで生まれた、といった話を聞いていたことかな、と思います。それで、海外と日本の架け橋のような仕事が出来ればなとずっと漠然と思っていました。

なるほど、そこから観光の仕事を始められたのですか?

いえ、大学を卒業してから日本語教師としてしばらく海外で働いていました。その後30歳を機に帰国し、化粧品会社と、銀座にある会員制の懐石料理屋のダブルワークをしていました。福岡に来たのはそのあとで、3年くらいご当地グルメの開発から情報発信まで、プロの地域活性コンサルタントのそばで修行しました。その後独立したいな、と考えていたころに、株式会社イーストのSUiTO FUKUOKA 立ち上げの話をいただきました。3年間外部の人間として地域のお手伝いをする仕事をしてきて、やっぱり現場に立ちたいと思っていた時期で。「女将になりたい。ひとつの館の切り盛りをしてみたい」と周りに話していたところでした。

SUiTO が登場するまでのストーリーが、既に濃いですね! 福岡に来て、東京と違うと思ったところはありますか?

私は、フリーランスで「私がやりたいことをやる」という働き方を選んでいます。名前が七條なので「七つの肩書き」を名乗っているのですが、福岡では何をしても「面白いね~」と言ってもらえる大らかさがあると感じます。東京にいた頃は、周りから「芙美ちゃんは、一体何をしているの?」と言われることもあって。個人の人となりを見るのではなく、どこの会社に勤めているのかを重要視しているように思います。
それと、私は福岡歴が長くはないのですが、人と人の繋がりが近いんです。その分、仕事がしやすいこともすごく実感しました。SUiTOも、福岡だからこそできたのだと思います。

ツーリストとローカルが、体験を通して自然に繋がる SUiTO FUKUOKA

SUiTO FUKUOKAは、はじめは今泉に立ち上げられたんですよね。

そうです。当初の今泉の場所は、そこまで観光客が来ない場所でした。また、観光案内所というのは一般的に公的な無料サービスですが、私たちは民間なのでどこかで儲けを出さなければならない。そこで、和文化体験・飲食・物販を入れ、ユニークな施設を作りました。オープンしてから半年くらいは「変わったものができた」ということや、外国人が働いていた点も注目され、ひっきりなしに取材が入りました。ただ、観光客には日本人もいますし、外国人向けの施設のつもりで作ってはいなかったんですが、文化体験があったのでどうしてもイメージがそちらになっていましたね。

これまでどんな人たちが利用されてきたのですか?

まずは地元の人々に飲食店として来店してもらい、「文化体験もやっていて」という話をすると、「今度、海外からお客さんが来るから連れてくるね」というふうに、どんどん口コミで広がっていきました。文化体験に来た人が今度は飲食に来たり、飲食に来た人が文化体験に来たりと、面白い循環ができました。

福岡では特に韓国からの観光客が多いですが、SUiTO FUKUOKA でもやはりそうですか?

韓国人が多いのでは?とよく言われるのですが、実は割合に差はありません。これは、福岡ではかなり珍しい現象です。基本的に全て英語対応になっているので、韓国人にそれほど浸透していないということかもしれません。

天神の課題は知名度アップ。「ショッピング」だけではない特徴づけが必要

七條さんから見た天神の課題はどういったことですか?

知名度の低さではないでしょうか。福岡の外の人はなかなか知らないし、私も福岡に来るまでは知りませんでした。
福岡県の中で発展している街としては、博多のイメージが強いのが現状です。観光客も、天神を知らないので博多に行って終わる人が多いように思います。

ショッピングをするために天神に来る、ということもあまりないのでしょうか?

特に欧米人では「ショッピング」は旅の目的としてあまり上位にあがりません。また、以前買い物をしたいとおっしゃった中国人VIPに天神はショッピングの街だと伝えたところ、「何もないじゃないか」とものすごく怒られたこともあります。「500万円の時計も置いておらず、取り寄せだと言われた。それなら上海で買う」と。確かにそうだよな、と思わされました。

インバウンド目線だと、どんな天神なら魅力が上がるのでしょうか?

観光客が絶対に来たくなるような何かがないといけないと思います。博多が「歴史の街」なら、天神はもっともっと最先端で尖がった「エンタメの街」になっていくといいと思います。その中に、大名のように小さいお店が沢山ある、というのが面白いのではないでしょうか。例えば東京のロボットレストランなどは進化していてすごく面白いですが、あれの福岡版というか、皆から「何じゃそりゃ!」と言われるくらいの何かが天神には必要だと思います。

エンタメの充実や地元の人とともに楽しめるお祭り感が、天神に来る目的に

これまで見てこられた観光地で「これは良い!」と思ったところはありますか?

グアムは長年定番の観光地ですが、歩いて回れるエンタメのある館がいくつもあり、ホテルにも必ず入っています。例えばマジックショーが1万円でも、観光で来ていればそれくらい払いますよね。
それから、台湾の京劇はインバウンド向けで最高のショーだと思います。エントランスに入るところからエンタメが始まっていて、素晴らしかった。待合のロビーで京劇のメイクを見せてくれたり、衣装が着られたり、お土産も売っていたり。払ったお金以上に楽しめることが、ショー以外の部分にもたくさんありました。実際に始まると、2つのモニターに英語、韓国語、日本語の字幕で歌の内容が出てくるんです。

言葉が理解できる部分が増えると、楽しみ方も増えそうですね。

ショーの演目も数種類でしょうから、それくらいの翻訳なら日本でもできると思います。大濠公園の能楽堂では英語字幕を試しにつけていたことがあって、それは反応が良かったですね。
それと、お祭り感もとても重要だと思います。例えば太宰府は、参道に行くだけでお祭り感があるんですよね。天神でも、ナイトマーケットとかウィークエンドマーケットのようなものを定期開催するとよいと思います。
それも、インバウンド目線から作るというわけではなく、国内外からの観光客から地元の人まで楽しめるものとして。

定期開催するということも、重要なのでしょうか。

そうですね。イベントの内容は変わったとしても、「毎週何時から何時までやっている」ということが必要です。そして「たまたまあってラッキー」というのは目的にならないので、観光客にもきちんと、例えば「毎週土曜日にあそこに行けば必ず何かやっている」と伝わっていることが重要ではないでしょうか。

まだまだ観光客に知られていない、天神の歩き方と楽しみ方。「デパートに行って終わり」にしないための情報発信が重要

観光案内所の視点から、天神に足りないと思われることは何ですか?

時々「九州各地の焼き物はどこで買えますか」と聞かれるのですが、天神で売っていないんです。デパートでも海外のものばかりを揃えるのではなく、もう少し九州各地の品揃えがあるといいですよね。九州のいろんなものが沢山集まっている中核としての天神になっていけたら、と思います。

そういった場所があれば、街での回遊にも繋がっていくかもしれませんね。

そうですね。それと、街の回遊という視点では「天神の規模感がよく分からない」というのが回遊の妨げになっているようにも思います。外国人にとっては、大名などにも様々なお店が広がっているといった情報が少なく、デパートに行っただけで「これが天神のショッピングなんだ」と思って帰ってしまう面もあるようです。

なるほど。天神に来て、大名に立ち寄らないのはもったいない気がします。情報が少ないのでしょうか。

地図が足りない、と私は思います。現状、カフェのマップですらそんなに出回っていません。韓国人の間では出回っているのか、韓国人はたくさんいるんですけど。もっと広い層に届くマップがあれば、大名への流れがもう少し変わってくるのかな、と思います。
それが天神に行けばどこの観光案内所でも手に入るという状態になればいいですね。

天神を面白くしていくヒントをたくさんいただいた気がします。

「福岡をアジアの中心に」と言われていますが、それは天神がどこまで注目を集めるかにかかっているのかな、と思っています。「福岡に来たら天神に寄らないで何しているの?」と言われるくらいにならないといけないのかな、と思います。そのためにも「絶対行かなきゃ」というスポットや、九州の良いものを集めた中核としての役割を持つことが必要ではないでしょうか。

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