フロントランナーインタビュー

INTERVIEW
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榎本二郎

株式会社 Zero-Ten
代表取締役

榎本 二郎 さん

福岡出身。
早稲田大学理工学部から、ニューヨーク工科大学に編入。世界各国を巡り、約10年間、ニューヨークで映像やアート制作活動を行う。帰国後の2011年、福岡にてホームページ制作、映像制作、イベント企画運営などを行う株式会社Zero-Tenを創業。2016年12月、個人の働き方・組織のあり方を変革する、ワークスペース & コミュニティというコンセプトのもと、国内最大級のシェアオフィス&コワーキングスペース The Company を開業。
また、初監督を務めた長編映画作品は、2018年モナコ国際映画祭で最優秀作品賞を受賞。

2019年06月27日

多様性を受け入れる環境作りが、東京にも真似できない天神の「色」に

「盛り上げたい」と思える街 福岡で立ち上げた株式会社 Zero-Ten

榎本社長は福岡ご出身ですが、東京や海外にもいらっしゃったんですよね。

中3まで福岡にいましたが、高1からは京都、大学からは東京、途中で休学して、世界1/3周をしました。ニューヨークで大学を出て、働いて、福岡に戻ってきました。

これまで映像制作やアートの領域で活躍されていますが、アートにはもともと強い関心をお持ちだったのでしょうか?

アートを志していたわけではありませんが、好きでした。遊び感覚で音楽、映画、絵画などの本を読み漁ったり。中学校で海外のバンドのCDをみんなで交換し合って「誰が一番最先端のものを聞いているか」みたいな遊び方をしたり。同じ学校に椎名林檎さんもいたし、そういう雰囲気はありました。
あとは大叔父がアート好きでコレクターだったので、その影響もあるかもしれません。

世界各国を巡ったあと、福岡で活動を始めたきっかけはどのようなことでしたか?

ニューヨークで一緒に働いていた人たちが、拠点とかあまり関係ないような生き方をしていて。明日は中国とか、パリとか。そのころはFacebookも流行っていて、どんどん雑誌の人や他のアーティストと周りが繋がっていっていました。その中で、東京にいなきゃいけないという認識が薄れていって。それで、福岡はゆかりもあるし、どうせなら「盛り上げたい」と自分が思える街に身を置きたい、と思いました。

そこで、株式会社 Zero-Ten を始められたのですね。

ニューヨークにいたとき、アート作品は個人名で飾られているのが主流の中、グループ名もちょこちょこ目にしました。個人名じゃない展示があるということに、自分の今後のヒントを得ました。個人で活動することに捉われず、集団でやるのもありなんだ、と考え方が変わって。それで Zero-Ten という会社を作って、芸術、クリエイター集団になろうと思いました。

日本人にとっても、外国人にとっても、言語の違いは大きな壁

運営されているThe Company は海外にも展開されていますが、その中心は福岡と考えてよいのでしょうか?

そうですね、 The Company の基点は福岡だと自分では思っています。ただ、シンガポールの社員に聞いてみると、彼らは全然そうは考えていない。シンガポールを基点に、ジャカルタやヨーロッパのほうに展開したいと考えているようです。

そうなんですか。海外の人たちにとっては、福岡が基点になりにくい理由はあるのでしょうか?

英語の壁が大きすぎて、ほとんどの人が福岡は福岡だけでしかやり取りをしないんです。フィリピンの人たちも結局シンガポールの人たちとばかりやり取りをしていて、福岡が中心で始めたはずが、海外同士ではやり取りされている中で、ここだけが異端になりつつあるという状況です。

言語の壁は、やはりコミュニケーションの弊害になるのですか?

特に外国の人たちは軽い会話が好きで、「おいしいコーヒー屋発見!」みたいなレベルのやり取りが仕事に繋がっていたりするんです。その会話に、福岡の人たちが混ざりづらいということが起きていて。言葉が思っていたよりも大きいことに気付きました。

外国人にとっても、福岡で活動する上で言語がハードルになっていることもあるかもしれませんね。

むしろ、こちらが海外を嫌がっているわけではなくて、向こうも日本語に対してすごくアレルギーがあるんですよね。例えば天神を「英語特区」にして、市役所に英語OKの部署を設けて、そこで登記チェックなどしてくれれば、すごく変わると思います。それを東京よりも先に福岡がしてしまうと、海外の起業家もずらーっとこっちに移動してくると思います。

「オモテ」の大型再開発だけでなく、「ウラ」の魅力も天神に

福岡、天神が魅力を増すためには、どのような要素があると良いでしょうか?

福岡は、ごはんはおいしくて、そこそこおしゃれで、さわやかで、すごく良い。その上で、人に隠れて圧倒的に悪いことができそうな雰囲気とか、すごくドレスアップして相手を誘惑しに行く場所とか、東京でいうと西麻布のような、「色気」文化みたいなものがあるといいですね。大型再開発で「さわやか部門」がどんどん進むと同時に、春吉あたりが圧倒的に色気づいてくる、みたいな展開を期待しています。
色々な国に行くと、面白い、とかステキだな、と思うのはそういう雰囲気なんですよね。裏の部分がしみったれているとただ汚いだけだけど、意外と洗練されている裏というか。

今の天神には、どんな印象をお持ちですか?

若者が多いというのは、いいですよね。それでいて、老若男女問わない感じもあります。色がありそうで、全部受け入れている感じ。渋谷などは若者が多すぎるイメージですが、それに比べて天神はどこにも属していないというか。

誰もがアート、美意識に自然と触れられる環境を

「天神でやってみたい」と思われることはありますか?

中央公園とかに、世界一大きなギャラリーを常設したら面白いと思います。世界のアーティストも、みんな日本という国に興味は持っているものの、あまりお披露目する場がないんです。そこで、広場全体に、イベント的にではなく常にアーティストの作品を置く。そこの担当者に言えば、アーティスト本人と直で交渉できたり、オリジナル作品も作れたり。

誰もが自然とアートに触れられる場は、身近にないかもしれません。

オフィスビルに必ずアートを置くというようなルールを作ってもいいかもしれないですね。例えばスウェーデンには、病院の建築費の何%は必ずアートに充てるという法律があります。病院を安く作ると牢獄みたいになってしまい、精神に良くないという理由からです。天神でも「開発の10%は必ずアート費用にあてないとだめです」とか、やってみていいんじゃないでしょうか。

福岡には、クリエイティブなことに対する受け皿があると思われますか?

その器はあると思います。実際、音楽とかすごい好きな気がしますし、耳も肥えているんじゃないでしょうか。絵画、とかになると福岡だけでなく日本全体的に疎い気はしますけど。

クリエイティブや美意識に対する感度を上げるために、どんなことをするべきでしょうか?

人間は、良いものよりも悪いものに敏感な傾向があると思うんです。だから、日頃使っているものの美意識が高いと感度が上がる気がします。例えば、バルセロナやパリに行くと、汚いけど公衆物のデザインが意外とオシャレ。驚いたのは、歩いている道のタイルをミロが、座っているベンチをガウディがデザインしていたり。そういう環境だから、そりゃあこの人たちはうるさいだろうな、この人たちなりの感度は植えついているだろうな、と。「金持ちだけの」とかではなくて、公衆の物がイケている、というのは1個のテーマであるような気がします。

東京にも真似できない「福岡、天神の色」を

外から見た福岡と、中から見た福岡のギャップを感じられることはありますか?

ズレはありますね。日本の色んな街がそうですけど、「東京的にならなきゃ」という意識が強い気がします。でも、外の人とか海外の人は「頼むから東京にならないで」と思っていて。同じものは別に2個いらないでしょ、と。

福岡、天神が参考にするとよい街はありますか?

マイアミは是非見てほしいです。あの街は、ニューヨークとかを全く見ていないんですよね。「高層ビルで、ガラスで綺麗なものを建てよう」みたいな意識が、彼らには全くない。マイアミならではのデザインや建築にこだわりつづけています。

天神にも、他にはない「ならでは」感が出てくると、魅力的ですね。

大都市対決になると、人口もあと5倍に増えないとだめだし、勝ち目がないですけど、例えば福岡だけ異常にデザイナーズホテルが多いとか。そのクオリティがすごく高くて、東京も勝てないというふうになると、面白いと思います。

福岡、天神が「これなら勝てる」というものはありますか?

アートだと、まだ日本一を取れる可能性がある気がします。福岡が既に突き抜けているとかポテンシャルがあるというわけではなく、全国どこも強くないんですよね。ただ、例えば福岡ではアートを節税対象にしてしまって、特にアジアの人に対して「ここで買った方が得だ」という流れを作る。億単位の買い物をする富裕層が押さえられるという意味で、アートはすごくチャンスだと思います。

多様化する天神を、福岡の新しいパワーに

福岡の中でも、天神と博多がそれぞれ進むべき方向についてどう思われますか?

観光目線で言うと、「天神と博多 = 新市街と旧市街」というか、天神は新しいパワーとして盛り上がってほしいです。レストランで言うと、日本料理とかは博多区に集まっているけど、天神はグローバルに「スイス料理も、スペイン料理もあるよ」というくらい、対照的になると面白いと思います。

では、観光以外の目線ではいかがでしょうか?

天神には、観光客以外の外国人が増えるといいな、と思います。天神では外国人が住んでいたり、ビジネスをしていたり、そこで何かコトをおこなっている、という。だからやっぱり、英語化は是非やってほしいです。
もちろん、観光客が増えるのとは違い、治安がわるくなるという一面もあると思います。多様性って簡単ではなくて、貧富の差も出てきますし。それでも、文化というのは、混ざって開花し、パワーアップしていくものだと思います。

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