フロントランナーインタビュー

INTERVIEW
01

株式会社グルーヴノーツ 代表取締役会長

佐々木 久美子 さん

福岡県出身。
小5よりプログラミングに出会い、プログラマー、システムエンジニア、プロジェクトマネージャーを経て、2004年、県内ベンチャー企業取締役就任。交通系、医療系など法人向けのWebシステムや、クラウドやスマホを利用したサービスの開発、コンサル、マーケティング等を行なう。2011年7月会社設立、代表取締役社長を経て、株式会社グルーヴノーツ代表取締役会長に就任。IoTやAIサービスをノンプログラミングで構築できる MAGELLAN BLOCKSを提供。自身の仕事や子育ての経験をもとに、2016年4月に天神にて新規事業として、IT学童保育「TECH PARK」の運用開始。2児の母。

2019年04月22日

「使う人」目線の一貫したまちづくりで、天神はもっと過ごしやすく。
イレギュラーを許容する文化が浸透すれば、もっとクリエイティブになる。

景色が変わっていく天神。「使う人」目線の一貫したまちづくりを

天神エリアに拠点を置かれていますが、どういった理由で選ばれましたか?

出身地ということもあり、活動拠点を福岡に置いています。中でも今泉の天神CLASS (国体道路沿いにある体験型複合施設) にグルーヴノーツのオフィスを構えた理由としては、エリア全体のおしゃれな雰囲気や、人が集まる場所であることに魅かれたから、ということが大きいです。
お向かいにはAppleストアがありますし、以前まではスターバックスも入っているTSUTAYAがすぐ隣にありました。TSUTAYAのあとにはドン・キホーテが入っていますが、TSUTAYAの頃と比べて、周辺を訪れる外国人観光客がすごく増えたと感じます。

その中で、課題を感じられることはありますか?

今の天神には統一感がないな、と思います。京都のような厳しい景観条例がない、ということも関係しているのかもしれないけれど、エリア全体のバランスが取れていないと感じます。
ここのオフィスも、洗練されたエリアに拠点を構えたという意識があったので、「お土産屋さんエリア」的な雰囲気になっていってしまってるな、と。インバウンド観光客は大切ですし、そういったお店が悪いわけではありませんが、「このエリアに?」という疑問はあります。

あとは、道路が歩行者目線ではなく、まだまだ車目線で作られているなー、と感じています。オフィスの目の前を通る西通りも、ベビーカーやスーツケースなどを持って歩くことも難しいほど、舗装がボコボコしていて。ヒールの高い靴を履いて歩くと、ヒールが地面に刺さってしまうこともあるんです(笑)。また、福岡って路面店がすごく重要だと思います。都市ではそんなに車は必要ないので、車の乗り入れを少なくしてしまったり、西通りで貸切イベントを実施したりすると、歩いていて楽しいエリアになるんじゃないでしょうか。

丸の内にもオフィスをお持ちですが、そこと比較してどうでしょうか?

福岡ではそれぞれの建物やプレイヤーが前に、前にと出ようとしていて、本来一番大切な、ずっとそこにいる人たち、住んでいる人たちの視点が足りていないな、と思います。事業者同士がもっと連携して、一貫したまちづくりの方向性に向かっていけるようになってほしいと思いますが、そのためには未来永劫のことも見据えてまちづくりの方向性をまとめられる人が必要。そんな経験とセンスがある人って、実は福岡にはまだまだ少ないように思いますね。

コンパクトシティ福岡。街に魅力がなければ、働く場所は自宅で十分

働き方という点では、どのようなお考えをお持ちですか?

仕事内容としてはオフィスがどうしても必要なわけではないので、街の魅力がなくなってしまえばオフィスもいらないよね、という可能性もあります。
ただ、やっぱり集まったほうがよい面もあって。例えば音声通話で打合せをするにしても、スタバでは難しいんですよね。周りがガヤガヤしていたり、聞かれてはいけない会話もあったり。そうすると、話せる場所を探すのが結構大変。それで結局オフィスが一番都合が良い、ということになる。本当にノマドワークをやったことがないと「羨ましい働き方!」となるかもしれないけれど、オフィスのない働き方って、実は大変な面もあるんです。

自由に見える働き方にも、苦労があるんですね。

コワーキングスペースという選択肢もありますが、それはそれで他の街と比べると福岡の状況は少し違うんじゃないでしょうか。30分もあれば、色んな所に行けるし、または、「移動時間がもったいないので、自宅でいいや」となったり。
もともと福岡に住んでいる人なんかは、例えば「大濠公園のあの森の奥に行けば誰にも聞かれずに話ができる」といったことも知っているかもしれない。別にコワーキングスペースでなくても困らなかったりします。東京や海外の流行りを真似ばかりしていても、福岡では通じない部分もあるのかなと感じます。

福岡に相当密着していないと、福岡のまちづくりはできない

東京と福岡では、やはりライフスタイルもかなり違うと感じられますか?

東京に比べると、やはり福岡のほうがQOLは高いと思います。例えば東京だと職場から帰宅するのに2時間かかってしまう・・・という方も多いけれど、福岡では職場から30分で家に帰れる人が多いですよね。ここにも東京の真似ばかりではダメだ、ということに通じる部分があります。東京では帰宅時間が長いですから、みんな途中でご飯を食べて帰るんです。そういったライフスタイルの違いが分かっていないと、東京の有名なご飯屋さんを福岡に持って来て、全然人気が出なくて「なぜだろう?」と首をかしげることになる、という。

なるほど。そういったズレが、街の色々なところで起きているかもしれませんね。

まちづくりって、相当その地域に密着しないと見えてこない部分があると思っています。例えばうち (グルーヴノーツ) の最首社長は「福岡に住んでビジネスをして10年」の人ですが、福岡出身ではありません。最近、私が勧めた山笠に出たり、長谷川法世さんの漫画『博多っ子純情』を読んだりして、「やっと福岡のことがわかってきた」と言っていますが、本当に、ただ住むだけではなく、それくらい密着しないと見えてこないことがあると思います。
まちづくりのコンサルティングを県外の方や会社に全て任せてしまうと、福岡のカラーを出していくことは難しいんじゃないかなと感じます。

長期視点と、女性視点を大切に

福岡、天神の街が今後大きく変わろうとしていますが、どういった視点が大切だと思いますか?

最近クローズアップされているスタートアップが、今すぐに福岡の経済にそこまで大きなインパクトを与えることは、まだまだ難しいかなと思っています。それよりも、もともと福岡の経済を支えてきた企業の意識改革や、底上げや掘り起こしをしていくということが重要なのではないかな、と。今、福岡が盛り上がってきているのも、10年前に頑張っていた人たちのおかげで良くなっているわけで、今の人たちが一瞬で出した結果ではないですよね。今頑張ったことが10年後の成長にインパクトを与えるんだ、という意識を各プレイヤーが持つ必要があると思います。未来の視点を持って引っ張っていける人たちがいれば、もっと勢いが出るんだろうな、と思います。

それから、街も、建物の中も、女性視点を取り入れるとすごく変わると思います。経済的社会活動自体が男性中心で構成されてきた中で、トイレひとつとっても、これまではなかった視点が出てくる。ちょっとわがままな「もっと華やかな空間がいい!」といったことでも、女性の影響というのが今後増えていく。そこをバランスよく汲み取っていくと、みんなにとってより良い仕組みや空間ができるんじゃないでしょうか。

天神にこんなものがあったらいいな、と思われることはありますか?

TECH PARKという「対ひと」の仕事をしていて思うのは、例えば大学がもっとオープンになっていたりして、学びたいなあと思ったときに、いつでも学びに行ける場所などがいっぱいあったらいいな、ということ。例えば私は理系出身なので、生産性、論理的、数値的で証明されているかどうかなどの観点ばかりを意識したり専門性を振りかざすだけではなく、思慮深く、人の心の移ろいを知るために文化人類学を学んだほうがいいな、とか (笑)

福岡にも「イレギュラー」を許容する環境を

ライフスタイルが今後も変わっていく中で、街のあり方はどうあるべきでしょうか?

今の世の中はイレギュラーだらけで、それにどう対応するか?が大事になってきています。例えば、昔は「みんな同じ洗濯機」で良かったことが、今は「私に合う洗濯機」を探すといったように、自分の都合やライフスタイルに合わせられるモノやサービスが求められている。

街としても、クリエイティビティや多様性が増すということは、常識が通用しない部分が出てくるということだし、LGBTや色んな文化、宗教を背景に持つ人たちが集まってくるということでもありますよね。そこでは、良いことばかりではなく、争いごとなども出てくるはずですが、それでもお互いが許しあえる空間やルールを作っていく必要があるんじゃないでしょうか。ただ、人材としてもイレギュラーを楽しめる人が求められるようになっている一方で、社会のルールや教育が、イレギュラー対応に慣れていない人たちを今でも作りだしてしまっているように感じます。

「許しあえる空間やルール」は、福岡、天神で作っていけるでしょうか?

福岡には「旅人のことは歓迎するけど、よその人がずっと残ろうとすると排他主義的になる」という闇の部分があるんですよね。九州全体で言えることかもしれませんが、男女別の役割のステレオタイプが根強く残っていて、家事や子育てのアウトソーシングへの抵抗感も感じられます。また、福岡には外国人コミュニティや外国人居住者向けの情報が少ないので、外国人にとっては東京の方が圧倒的に住みやすい。アジア各国の人たちにとっても福岡は「近いだけ」の場所になってしまっています。

福岡にはイレギュラーなことや新しい価値観を許容する環境がまだまだ少ないと感じているので、非難されることがあっても「こういうやり方もありなんだ」ということを、実際に行動に移している人たちが、どんどん発信していかないといけないな、と思いますね。

OTHER INTERVIEWS

ページトップへ戻る